「抜いた歯の代わりに、もう一度自分の歯を使えたら」。そんな願いを叶える方法が自家歯牙移植です。虫歯や外傷で歯を失ったとき、インプラントやブリッジ以外に、自分の歯を移植する選択肢があることをご存知でしょうか?
インプラントと何が違う?「自家歯牙移植」とは
自家歯牙移植とは、親知らずなど不要な歯を、抜歯が必要になった部位へ移植する治療法です。人工物を使わず、自分の天然歯で噛む機能を回復できるのが最大の特徴です。
歯根膜という繊細な組織を残して移植することで、インプラントでは得られない「噛みごたえ」や「感覚」も期待できます。
特に「金属アレルギーが不安」「インプラントに抵抗がある」という方にとって、有力な代替治療といえるでしょう。
自家歯牙移植が適応されるケースと使える歯は?
移植できるのは、主に親知らずや矯正で不要になった健康な歯です。移植先は、重度の虫歯や事故などで抜歯を余儀なくされた部位が対象になります。
ただし、ドナー歯や移植先の状態によっては適応できないこともあるため、事前の診査とレントゲン評価が不可欠です。
自家歯牙移植の治療の流れと期間、気になる費用は?
治療について
自家歯牙移植は、以下の3ステップで進行します。治療期間の目安は約3〜6か月です。
1.ドナー歯の抜歯:親知らずや埋伏歯など、移植に使える歯を抜歯する
2.移植と固定・神経治療:抜歯後すぐに、受け入れ先の歯槽骨へ歯を移植し、固定。歯の神経の治療もこの段階で行う
3.生着の確認と仕上げ処置:骨と歯がなじんだら、被せ物などの補綴処置を行う
保険適用の条件
・親知らずを移植歯(ドナー)として使用すること
・治療開始時点で、移植する歯と移植先の歯が両方存在しており、サイズや形が適合していること
・治療目的が明確で、機能回復が必要と判断される場合
費用の目安
・保険適用の場合:約5,000~15,000円程度
・自費診療の場合:数万円~十数万円程度(医院によって異なる)
自家歯牙移植の成功率は?術後のケアが鍵を握る
自家歯牙移植の5年後の生存率は約60〜90%と、症例や術後の管理によって差があります。成功の鍵を握るのは、術後の丁寧なセルフケアと定期的な通院です。
移植後は腫れや軽い痛みが出ることもありますが、適切な食事管理やブラッシング指導を受けることで、長期的な安定が図れます。
まとめ
インプラントに不安を感じている方、自分の歯をあきらめたくない方にとって、自家歯牙移植は再び自分の歯で噛める可能性を開く治療法です。
すべての方に適応できるわけではありませんが、条件が合えば費用面・機能面でも非常に有利な選択肢となり得ます。
まずは信頼できる歯科医院で、自家歯牙移植が自分に可能かどうか相談することから始めてみてはいかがでしょうか。